RENO AIR RACE 2007体験記
RENO 8日目
さて、熱狂の一週間が過ぎて今日がステッドを訪れる最終日。
朝ごはんはアメリカ上陸後初めてのマックでした。
レースウィークが終わったあとのステッドは独特の雰囲気があります。祭りの終わった空虚さと帰り支度のあわただしさが混在する奇妙な時間です。
一方、普段は入れないランプに入ることが出来て、レースウィークではありえないアングルやシチュエーションで機体を撮れる事は魅力です。一日余分に滞在するだけの価値があります。
もう警備の人もいないガランとしたゲートを昨日までは許されなかった車で通過するのはなかなか快感(^^
アレだけ歩き回った会場内を車であっという間に移動するのは気持ちいいもんです。
とりあえずアンリミテッドのピットのあたりで下ろしてもらって撮影を始めました。まずはチェックメイトを撮影開始です。一足先にいなくなったストレガのテントの元で翼を休めていますが、これは自分のテントが解体中だからですね。
もともと頭でっかちな機体だけに、広角で撮るとそれはもう大変なことに(笑)それにしても魔改造と言う言葉がふさわしい原形のとどめなさぶりが見れば見るほど分かってきます。同じヤクベースのステッドファストとの違いも興味深いところ。

こんどはタイガーキャットの方にいくとちょうど写真を撮るのには邪魔だったキャンピングカーがいなくなって撮影チャンスでした。普段撮りづらい後方からのショットを撮りまくります。
こういった大型の機体こそ広角の出番です。かなり下がらないと取れないアングルでもバチバチ撮れて楽しいー(^^
と、ふと横のセプテンバーフューリーのピットを見ると、あのヒゲもじゃのデイブさんがいるじゃないですか。せっかくなので来年の再会を約すべくご挨拶します。

やはり昨日の壮絶なリタイヤが効いてるのか、ちょっと元気の無いデイブさんでした。それはそうでしょう、実はセプテンバーチームは全機リタイヤで例年に無い惨敗を喫してしまったのです。信頼性ではピカイチだったチームにとってこれ以上の悔しい結果は無いでしょう。
でも、デイブさんが別れ際にかけてくれた言葉はとても印象的でした。
「今年もリノに来てくれてありがとう!」
これです、この気持ちを持った飛行機が好きでたまらない連中が集まるからこそ、僕らは熱に浮かされたようにこの地を遠路はるばる訪れているのだと改めて実感できる熱い言葉でした。
そして我々はプレシャス・メタルのピットを訪れます。去年はもう既に帰ってしまっていたこの機体はまだピットにいました。ロープが無いのをいいこ
とにぐるぐる周りを回って写真を撮ったりしていると、いきなり声をかけられびっくりしました。そう、いつの間にかロンがいたのです。

ロンは我々に手招きすると「主翼に乗ってみるか」と言ってくれるじゃないですか!もう我々はかぶりつき状態です。
マスタングはシーフューリーやベアキャットと違ってコクピットへのアクセスは容易です。主翼の前からタイヤと主脚柱の出っ張りに交互に足をかけていけばするっと登れます。
注意しなければならないのは滑りやすいことと、フラップを踏まないこと。
そこに注意しつつ、とうとう憧れのコクピットを覗く事に成功したのです。


想像以上にコクピットは開口部が小さく、幅も狭いです。小柄なロンなら何とか入るでしょうが間違ってもボブ・バトンのような体格では乗れないで
しょう。コクピットのレイアウトはもはや原型のP51の面影は無く、ほぼオリジナルで共通していそうなパーツはスロットルぐらいでしょうか。
いかにプレシャス・メタルが限りなくオリジナルエアレーサーに近い構造をしているかが伺えました。
ちょっと笑ったのは財布がフレームの間に置きっぱなしだったこと(^^
改めて御礼を言ってロンに別れを告げます。来年の再会を約して。

ランプの方にいくと、何機かのエアレーサーが並んでいます。その一番左の機体があのリノのミナルディこと白いワイルドキャット「エア・ビスケット」でした。
こうやってぐるっと回ってよく見ると、機体のつくりが周りに機と違ってそこかしこに30年代の匂いがしていて面白かったです。設計思想的には完全に30年代中盤の機体ですから当然ではあるのですが。

と、突然轟音が響き渡ります。右側にいたF7Fがランナップを始めたのでした。R2800二基の重なり合う轟音が腹にぐっと響きます。これは単発機では得られない感覚です。
そして、エンジンが回ると同時に油圧が回復して畳まれていた主翼が通常ポジションに戻ります。これはやはり男の子としては燃えずにいられないシチュエーションでもあります。


ふと横を見ると、またいましたよあのシルエットが(笑)今日は紅白のストライプのパリッとしたシャツと黒いズボンで妙にお洒落なビル・ロジャース氏です。
彼もじっとランナップ中のF7Fを見つめていました。そういう視線を見ていると、この人も飛行機が好きでしょうがないんだなあとよく分かります。
一機、また一機と帰路へつく機体を見送っていると、とうとうプレシャス・メタルが動きだします。まさにこのエンジン起動の瞬間を狙っていた竹光氏がビデオカメラを向けました。
重いグリフォン・エンジンの爆音と共にプロペラが回りだします。互い違いに回るプロペラは何度見ても機械としての魅力にあふれていて、心の琴線をビリビリ震わせてくれます。ホント、これを見るためにだけにお金を払ってもいいぐらいですよ。


そしてプレシャス・メタルが去り、先ほどのワイルドキャットもタキシングを始めます。ちょうど近くにいた我々はプロペラ後流をモロに喰らいました
(^^;こうやって喰らってみると、巻き起こる風がねじられているのが体感できます。それにしても、このF2Mのパイロットはいい歳した老人だと言うのに
颯爽としてカウボーイハットまでかぶってました。それを脱いだと思ったら今度は第二次大戦仕様の皮帽子ですよ?どこまでカッコいいんだと思いました。

そろそろ切り上げようとピットに戻ってきたところ、ちょうどセプテンバーフューリーがいたので写真を撮っているとその脇にはがっくり肩を落とした
カーチェンフォート氏が他のクルーとなにやら話していました。さすがに声をかける様子ではなかったのでその場を離れましたが、やはりショックは大きかった
んでしょうね…去年があまりにもパーフェクトウィンだっただけに。
そのあと、トニーさんの公式写真などを撮ってから、我々はステッドをあとにしました。去年もそうだったように、陽光あふれる時間帯だけに寂しさは無く、ただ来年への思いだけを残してその場を離れたのです。(つづく)
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